2014年10月29日水曜日

「LIVE ~ LEGEND 1999 & 1997 APOCALYPSE」 / BABYMETAL

BABYMETALのライブDVD & Blu-ray「LIVE ~ LEGEND 1999 & 1997 APOCALYPSE」が発売になりました。

僕はNHKホールで行われた「LEGEND "1999" YUIMETAL & MOAMETAL 聖誕祭」にてマニピュレーターサポートしております!
と言っても昨年の6月末のライブですので若干記憶が…。
昨年のブログを読み返して「あぁそういえば」と思い出してきたところです。

自分が関わったライブの映像作品だとなかなかお客さん視点で観ることができない(自分の音や曲間などに意識が行ってしまう)のですが、BABYMETALの魅力のひとつであるダンス・フォーメーションは普段はなかなか正面から見られないので楽しみに観ようと思います。

2014年10月22日水曜日

発信、そのまえに

最近カメラ散歩が出来ていないな〜と写真欲が溢れ気味です。

ツアーに出ると行く先々で思い出の一部を画にして帰ってくるのですが、TwitterやInstagramなどにアップする際にはいろいろと気をつけるようにしています。
お仕事で回っている=関係者(ミュージシャン・スタッフ)と少なからず近い場所にいるわけですから、例えばオフ日の個人行動中であったとしても以下の点に注意するようにしています。

・滞在場所がわかる写真
泊まっているホテルはもってのほかですが、周辺の、ホテルが特定されそうな写真を複数枚アップしたりしない。

・現在の居場所がわかる写真
基本的にはリアルタイムを避け、次の場所が想定されそうなものを避ける。

人がわかりやすく集まる場所、各地のランドマーク的なところやライブ会場周辺などの、いても不思議ではないタイミングではあまり気にすることもないのですが、上記二点は常に頭に入れておかないと要らぬ騒動に発展することもありますので。
きっと今回きりの訪問だからと気を抜いてしまうのも事故の元ですね。

写真に限らず、ツイートの内容にも配慮しないといけません。
ただ余りにもガチガチだとせっかくのツールの意味もなくなってしまうので気をつけつつ伝えたいことを書くようにしています。
逆に考えればこれらを使ってミスリードすることも出来るわけですが本来は楽しいことを共有するためのもの。
ただ、中には少し「外れた」人の目に留まる可能性もありますので、これらのことに気を遣うのは現在のSNS文化では必須と言えます。
邪推する人というのは全く関係のない言葉ですら自分の都合の良いように解釈・紐付けしたりもしますから、さすがにそればかりはその人の読解力に委ねるしかないのですが…。

↑これらを踏まえた上で僕のツイートや写真、Instagramなどを見ていただくとなんとなく意図されたものが見え隠れして…実にイヤラシイですね!(笑)
(なんにも考えていないこともありますが)
あれもこれも見て欲しい…けど絞ってこれだけ、ということもしばしばです。
本当に徹底するのなら何にも発信すべきではないのですが僕も楽曲提供やアレンジのお仕事などもしていますのでそうも出来ず。
とはいえ、もっとうまくツールを使っていきたいとは思っています。
近い将来、SNS関連はすべて止めてブログとウェブサイトだけにしようかなとも考えております。
元々が話し好きなので、余計なことを言う前に仕舞うのもありかなと。

プライベートであっても、要するに個人情報をばら撒きながら歩いていることになるので発信する前にはまず、確認です。
友人家族にだって関係してきますしね。

2014年10月21日火曜日

ライブ向けソフト、一長一短

ハードシーケンサーにシンセや音源モジュールを大量に繋いでオペレートしていた時代は既に懐かしく、今ではパソコン一台で様々なデータをオーディオ出しするのが一般化しています。

ライブに使うソフトは人によって様々ですが、ユーザーとして多いのはProTools、Digital Performerといったところでしょうか?

ProToolsは制作現場(特にレコーディングスタジオ)では大定番で、現在の音楽シーンのほとんどで使われているためCD制作時の最終データをそのまま流用できるのがメリット、安定性も抜群です。
アウトボードを多用したりコンソール出しでTDされたものでなければさほど時間もかからず仕込みが出来るのもポイント。
反面、1曲=1ファイルを多数読み込んで並べることは出来ないのでたくさんの曲を演るライブには不向きです。
「一曲毎に閉じて→次曲を開いて」ではファイルが立ち上がるまで時間が掛かりますし、そのためにProToolsシステムをふたつ用意してピンポンするのも規模が大きくなります。
ですのでProToolsをメインに扱う人のほとんどは、パラデータをある程度ステム化したのちに通称マスターセッションと呼ばれる「各曲のステムデータを並べたセッションファイル」を作り、それを再生するという方法を取っているかと思われます。
0秒から一曲目、10分から2曲目…のように、横の時間軸にずらっと並んでいるわけですね。
デメリットとしてはステムデータ内のバランスを変えることになった場合はそれぞれのセッションファイルに戻って書き出しを行い、それをまたマスターセッションに戻すという作業が必要になること。
通しリハ中などに「あ、やっぱりこれだけ上げておこう」みたいな状況に対応しにくいわけです。

Digital Performerも一部のマニピュレーターさんに人気のソフトで、僕も十数年の間はライブで使っていました。
このソフトのメリットは各曲のデータを大きな箱のなかの一つとして管理できること。
つまり〇〇ライブというファイルの中にいくつもの独立した曲ファイルを入れ込んでスイッチしていけるのです。
デメリットとしては、先ほど書いたように現在渡されるほとんどのデータはProToolsファイルになるために仕込み作業が必須なところ。
そのままでは開けないのでまずはProTools上で移植するためのデータを作成してそれを読み込んでいかねばならず、内容によってはかなりの時間を要します。
その他にもオーディオ関係のエディットなどにおいて若干の弱さを感じるところがありますが、そもそもがMIDIをメインにした音楽制作ツールから進化したものですから仕方がないところなのかもしれません(とは言え今のバージョンに至るまでにかなり頑張ってきたと思います)。

他にもマニピュレーターの人がマニピュレーター業とは別に作曲やアレンジなどの制作仕事をしている場合、普段使い慣れているソフトをそのまま使うことも少なく無いと思います。
ちなみに僕はこのケースで、ここ数年は制作・ライブ共にStudio One 2を使っています。
メリットはとにかく動作が機敏なこと。
特にオーディオのタイムストレッチ速度が素晴らしく、テンポ設定を最初にしておけば数十トラックを数秒もかからず変更できます。
ライブ現場では前後の曲との関係などからテンポ変更をすることがあります。
これが他のソフトだとクォリティーとの兼ね合いからかなりの時間を要してしまうことがあるのですが、Studio Oneだと同じことを待ち時間皆無と言える速さで行うことができるのです。
今まではこうしたテンポ違いを試してみたいといった場合は前日に仕込んだり、もしくはシーケンスを回さない曲をやっていてもらい、その間に作業したりと「マニピュレーター待ち」がありましたが、このソフトにしてからその場ですぐに何通りでも試すことが出来るようになりました。
概念が独特なので慣れが必要なものの、エディットに関しても他のソフトと同等以上のことができるので走らせながらどんどん編集作業を行うことが出来るのも魅力です。
複数の曲を立ち上げておけるのもライブ向けです。
Digital Performerのようにひとつのファイル上にというスタイルとは少し違い、裏に複数のファイルを立ち上げておくことができ、任意に切り替えることで同様のオペレーションを実現できています。
デメリットとしてはSMPTEなどの同期に関する機能はなく、例えば映像と同期信号を使って完全にリンクさせるなどといったことは出来ません。
また仕込みに関してもDigital Performerなどと同じく事前にレコーディングデータ(ProToolsデータ)からコンバートしてしっかりと作らないといけません。

僕はどのソフトを使っていても、最終的に本番ではAlesis ADAT HDに流しこむので実質どれも同じということにもなるのですが、リハーサルでの進行を妨げずにどんどん進めていけるStudio Oneが今は一番使いやすくてお気に入りです。
大切なのは現場において「今って何の待ち時間?」という状況を作らないこと。
マニピュレーターが朝イチから夜遅くまで同じ場所、同じ体勢で休憩もほとんど取らずに何かをしているのはこのための準備がほとんどだったりします。
そういった意味でも処理の速さや守備範囲の広いStudio Oneを使うようになってから休めるようになったかも…!

今回もかなり突っ込んだエントリーになりましたが、何かの参考にでもなれば幸いです。

2014年10月14日火曜日

セッション・マニピュレーター

今回はさらに突っ込んでライブマニピュレーターのプレイスタイルについて。
どちらかというと同じ職種の人との情報交換的な内容になりますので、その辺りご了承ください。

僕のマニピュレーションのスタイルは「セッション型」。
これだけだとライブなんだから当たり前って感じなんですが、マニピュレーターはその人によってシステムやプレイスタイルが違うので、実はそれぞれに個性があります。
昨日までのエントリーを読んで頂けたのならば「マニピュレーターはいろんな音を扱う人」ということはなんとなく分かってもらえたのではないかと思います。
かなり乱暴に音の流れを書くとすれば「シーケンスデータ → PA」これが全てになるのですが、この"→"の部分にマニピュレーターの個性が反映されます。

わりとベーシックなケースだと「ProTools & オーディオインターフェイス → ミキサー → PA」で、ミキサーを噛ませずにダイレクトに送ったり、二台のProTools(片方はバックアップ)をSyncさせてRadial SW8に信号をまとめることで片方のHDDが止まってしまったときのトラブル対策をしたりする場合もあります。
音の出元がAlesis ADAT HDなどのHDRの場合もありますが、事前流し込みや編集用に母体となるPCシステムは必須です。
オーディオインターフェイスからダイレクトにPAへ送る、あるいはミキサーを噛ませる場合でもライブ中はフェーダーなどの操作を行わずにシーケンスデータを流すのみというスタイルがあるというのは前回も書いた通り。
その場合は事前にしっかりと予想を立てて音作りをしてPAチームにその先を委ねるというやり方になりますが、僕はある程度地ならしをした上でリアルタイムにセッションしていくタイプです。

僕のシステムのPCソフトはStudio One 2で、これをリハーサルなどでの編集用&本番での緊急時の対応策用として使っています。
そして実際に本番時に使うメイン機材はStudio Oneから流し込んだADAT HDを使い、それをBEHRINGER X32の表チャンネル(1〜16ch)、同内容のPCシステムの音(Studio One)を裏チャンネル(17〜32ch)に立ち上げます。
リハーサルの時は「サビ前からスタート」などといった特定の場所から始めたり各トラックのバランス決め、テンポやサイズの変更の可能性もあるので裏チャンネルを生かしてStudio Oneを使い、もし変更箇所があれば本番までの間にADATに流しこみを行います。
つまり本番時にはある程度のバランスは決め打ちされていることになるのですが、その後の対応が出来るように卓上には何系統かに分けて立ち上げます(前々回を参照)。

僕がADATを使うのには理由があります。
一番は信頼性、安定性。
ある程度のエディット機能もありますが、基本的には「録音・再生するだけ」の専用機材ですのでその信頼性は高い。
少なくとも僕は一度もトラブルにあったことがありません。
パソコンは便利でいろいろなことが出来ますが、その反面環境を安定させるのにとても神経を使いますし、トラブル要素は専用機材より多いと感じます。
僕はライブに使うソフトは最低半年以上使ってみて、その善し悪しを把握してからライブ現場に投入するようにしています。
ソフトのバージョンが0.01上がったとしてもそれにバグがないとも限りませんから、長期間検証して自身が責任が持てると判断できるまでは以前のバージョンを使ったりもします。

さて、ここからが僕のやり方です。
ライブ本番中はADATを回して進行していきますが、同時に自分のイヤモニ内で裏チャンネルのStudio Oneの音を聞きながら手動で合わせて行きます。
仮にADATがトラブルを起こして止まってしまった場合はアサインしたDCAフェーダーを使って瞬時にスイッチします。
この辺り、本当ならSyncをかけるべきなのですが残念ながらStudio OneにはSync機能が皆無(!)なので割り切っている部分です。
この、裏チャンネルを使ってシーケンサーを走らせる意味はトラブル対策のバックアップ以外にもあります。
むしろ、そちらに重きを置いてのやり方と言えます。

『曲のサイズを間違えてしまった!』
どれだけ綿密にリハーサルをしていても、時としてこういった事態に陥ることがあるかもしれません。
特に循環進行をメインに構築されたR&Bであったり、最後のサビやアウトロの回しが何周もあるような場合(ライブアレンジでサイズが伸びるケースはよくあります)、ボーカルやバンドがうっかり次への展開を忘れてしまったり逆に一周飛ばして先へ進んでしまう可能性がないとは言えません。
もしくはお客さんの盛り上がりがいい感じ過ぎて、やっぱりもう一回サビに戻ろうぜ!というのもライブならではの自然な心の動きでしょう。
そういった場合、生演奏であるバンドはボーカルに付いていけますが、シーケンサーは決まったものが順次再生されていくわけですから困ったことになるわけです。
普通、演者は「シーケンサーとはそういうものだから」という理由でその場のノリで変えることはせずに決められた通りに進行していきます。

僕は以前からここにやきもきしていました。
機械だから決まったことしかできない、というのはライブの面白みの一部を失わせるのではないかと。
そこで裏でシーケンサーを走らせることにしました。
そうすることによってサイズが変わってもその場で対応し、必要に応じてスイッチすれば良いからです。

その昔、こんなことがありました。
大サビが終わってブレイクし、2拍後から歌きっかけでサビへ入るという場所で、3拍後から歌が入ってきたのです。
つまり1拍ずれているので結果として歌に対してシーケンスの音が1拍早く始まってしまう状況になりました。
そこで僕はメインをミュートして裏のシーケンサーを1拍後ろにずらしてスイッチ、事なきを得ました。
別のケースでは、ワンハーフ(二番をカットしたショートバージョン)の曲なのに「フルサイズでお届けします!」とボーカルの方が言って曲が始まったことがありました。
この時もメインを流しながら裏でフルサイズのデータを急いで作って1サビ終わりでスイッチ、本来は無かったはずの間奏から二番へ…という冷や汗ものの展開でしたが上手くいきました。
これらは別に、僕は凄いんだぜ!と自慢したいわけではありません。
「看板(メインとなるアーティスト)が言うこと・やることに嘘があってはいけない」という、ごく当たり前のことに応えるための方法であり、すなわちそれがセッション・マニピュレーターであると考えているからです。
そのため、本番中は常にメイン機材のトラブルを始めとした各種の「If」を考えながら挑んでいます。
バックバンド、フロントメンバーの一挙一動にも神経を研ぎ澄まさないといけません。
当然、曲の構成や抑えるべきポイントを把握しておかないとフォローが遅れてしまうので、特に新曲など慣れていない曲に対してはとにかく時間を掛けて身体に入れるようにします。

決まったサイズはなくてきっかけで次の進行へ移るという、いわゆる「Xタイム」にもシーケンサーは有効です。
この場合はXタイムになる部分をループさせておき、きっかけで解除すれば問題なく進行できます。
最近では頻度が減ってきましたが、ゴスペラーズではお客さんにハモリのパートを教えて会場のみんなでハモるという「なりきりゴスペラーズ」というセクションが曲中に登場することがあります。
この時もメンバーがお客さんに教えて全体が完成するまでの間はずっとループさせておき、きっかけ(リーダーからの振りであったり、きっかけのセリフであったり)でループ解除→最高潮の盛り上がりの中で次のセクションへ突入!という感じです。
以前にTwitterか何かで「イコールではないけど、DJに近いアプローチをしている」と書いたことがあるのですが、なんとなくお分かり頂けましたでしょうか?

僕はオンステージになることは滅多にありませんが、どの場所でプレイしていても一緒に演奏している気持ちで身体を動かします。
見切れている場所などでやっていた場合、それを見たお客さんから「ノリノリでしたね」と言われますが、心と身体をステージ上の人たちとシンクロさせているので当然なわけですね〜。
それに仏頂面で椅子に座っているよりも一緒に楽しんで"プレイ"するほうが音を出す者のテンションとしては自然だと思うのです。
ゴスペラーズではソウルステップを踏むし(まぁ僕は下手なんですが)、BABYMETALではヘドバンかます(足を踏ん張ることが多いので大体翌日は筋肉痛)。
ごくごく自然、だと思ってます。
なぜなら、ライブは五感をフルに使って楽しむ娯楽ですから!
それが例えばクラシックだとしても「身体をリラックスさせて音に感じ入る」というムーブがあるわけですから、音楽はなんと楽しいことでしょう。

心はいつもオンステージ、なのであります。

2014年10月13日月曜日

リスニングをモニタリングとして使う

更に続いて、マニピュレーションに関するなんとやらの三回目。

前回はPAチームに送る回線と何故回線を分ける必要があるのかについて書きました。
本番中に僕がやっていることも少しだけお話しましたが、なんとなく分かって頂けたでしょうか?
今回は「何故、モニター回線を二系統もらうのか?」に関してのエントリーです。

そもそも、モニタリング・モニターとはなんぞやというところから書いていきましょう。
ライブを観に行ったことがある方は、ステージ上に幾つもの四角い箱のようなものがミュージシャンやボーカルの人の前に設置されているのを見たことがあるのではないでしょうか。
あれがモニタースピーカーと呼ばれるもので、特に床に置かれているものは通称「コロガシ」と言います。
ステージの両脇からお客さん側ではなく内側(演者側)に向けられている大きめなスピーカーは「サイド(スピーカー)」と言い、同じくモニタリング用途のものです。
最近では耳にはめ込む、いわゆるイヤフォン型の通称「イヤモニ(In Ear Monitor)」も広く使われるようになっています。

歌をうたう、楽器を演奏するには自分の音以外の演奏とアンサンブルしますよね。
その際に自分が必要とする音を聞く(確認する)ことをモニタリングと言います。
アンケート等で調査・リサーチすることをモニタリングと呼びますが、それと同じですね。
モニターには監視するという意味合いもあるので、それを音に置き換えてみるとイメージしやすいのではないでしょうか。

通常、モニター作りはPAチームのモニターエンジニアさんにオーダーして自分好みのバランスを組み立ててもらいます。
この時、ある特定のパートの音域を調整してもらったり、イヤモニであれば定位(右や左、音の居場所のこと)を変えてもらうといったことも可能です。
例えば会場の"鳴り"として低音が響くのでモニター上ではベースの低域を削ってもらってすっきりさせて音階を感じ取れるようにしたり、自分の歌にリバーブを掛けてもらって雰囲気を出したり等々。
こうやって自分が歌いやすい・演奏しやすい環境を作っていくわけです。
リズムキープするためにドラムの3点(Kick・Snare・Hat)を多めで鍵盤を上げてコード感を見失わないようにする、さらには「この曲の時だけ」というオーダーもあったりと、その内容は人によって十人十色なのでモニターエンジニアさんは大変!
ゲストが多数出るような大きなイベントなど、演者が多いところではバンド、ボーカルそれぞれ専任のモニターシステム・モニターエンジニアさんがいる場合もあります。
勿論お客さんの声を聞くためのオーディエンスマイクというのもありますので、たとえイヤモニをしていてもお客さんの反応やコール&レスポンスをしっかりと感じることが出来ます。
(これがないとレコーディングしているみたいに冷静になってしまって本当に寂しい)



前置きが長くなりましたが、このようにして僕もモニターを作ってもらい、それを自分のミキサーに送ってもらいます。
同時に、最終的にお客さんが聴いているミックス…ハウスエンジニアさんの作るハウスミックスも同じくミキサーにもらいます。
それぞれの用途は以下の通り。

■モニターミックス

自分のやりやすい環境で音を確認、構築していく場合はモニターミックスを聞きます。
こちらがリクエストしない限りは基本的にバランスは変わらないので、特にたくさんの音色を扱う僕のパートでは自身の音が前後の曲に比べてバランスが崩れていないかという確認作業がとても重要になります。
他のメンバーの音は、ハウスミックスと同じようにお客さん側からの定位にしてもらいます。
自分の音はそのままこちらが作った定位で出ますから、例えばバンドのギターが右寄りで出るなら同じタイミングで出てくるシンセの音は左に寄せて見えやすく配置することもあります。
その他にも、CDではTomが左から右へ流れて(ドラマー視点)最後に右でSEが鳴る、といったときにライブミックスではお客さん視点になってTomが右から左へ流れるのでSEも逆にすることでストーリーを成り立たせたり。
このようにケースバイケースですが、結果CDとは違う定位になることもあります。
特に全体のバランス作りをしていくリハーサルではこちらをメインに聞きながら作業します。
本番ではMCから次の曲へのキューになるセリフやきっかけの音(VTR音声から本編への乗り替わりなど)を聞き漏らさないために大きめに返してもらったりもします。

■ハウスミックス

前回までのエントリーにおいて、こちらがいくつかの系統に分けて音をPAに送っていることを書きました。
ハウスエンジニアさんが最終的なすべての音(歌、演奏)のミックスをして客さんが聴く「正解の音」となるのですが、このときに自分の音(自身の手元のバランス)がそのまま反映されないこともあります。
前回書いた、あるシチュエーションにおいて音量の上げ下げをハウスエンジニアさんが行っている場合などはモニターミックスでは分からないので、本番ではこちらをメインに「ライブの流れ全体の中での自分の音」を聞いてオペレートしていきます。
この場合、シーケンス小さめでミックスされていたときには自分の音を把握できないこともありますが、そのこと自体を知るというのも大切なプロセスです。

これらを状況に応じて手元で切り替えることによって聞くべき所はしっかりと聞いたり全体の中での自分の音の居所をコントロールします。
もしPA側の都合でどちらか片方しかもらえない場合はハウスミックスをもらいます。
ハウスミックスはお客さんが「聴く=リスニング」のための音なのですが、これを「聞く=モニタリング」わけですね。


今回もかなりなざっくり具合でしたが、なんとなくご理解いただけましたでしょうか?

蛇足になりますが、僕がこういった音にまつわることを書く時はこれらリスニングとモニタリングの意志を反映させるようにしておりますので、注意深く見ていただければ僕が音楽を楽しむために聴いているのか何かを聞き分けるために聞いているのかが「きく」の表記から読み取れると思いますよ。

2014年10月12日日曜日

プレイスタイル

前回から引き続き、僕のマニピュレーションについて。
専門用語もやや多くなっておりますが、なるべくシンプルに書いてみます。


↑僕が使っているミキサー卓。
ここに各種シーケンスデータおよびPAチームからのモニターが立ち上がっています。
担当現場・楽曲内容によって形式は様々ですが、大体以下のようにある程度チャンネルを分けています。

・Rhythm 1
 メインチャンネル。Loop、breakbeatsほかパーカッション・SEなど。

・Rhythm 2
 サブチャンネル。PAが特に独立して触りたくなるであろうものをリクエストに応じて。

・Synth・Inst
 鍵盤もの、シンセ等々。

・Strings・Brass

・Extra
 ボコーダー、トーキングモジュレーターものなど特殊なトラック。
 その他必要に応じてシンセベースなど。

・Chorus
 声ネタなど。

・Click
 ドラマーへの優しさを(大切)。

これをメインのADAT HDとサブのStudio Oneからそれぞれ同じものを表と裏に立ち上げ、DCAで切り替えができるようにしています。
さて遡って音源ソース…僕の場合はStudio Oneですが、ここにある全てのトラックを卓の各チャンネルにアサインします(同信号はデジタルでADAT HDにも流れ、AD/DAされた信号が卓に入ります)。
もちろんStudio One上で各トラックのバランスや音色作りをしているので、つまりはグループバスとして卓のチャンネルを使っているわけですね。

次は卓上の各チャンネルをPAへアウトするのですが、PAチーム側の要望によってその数も変わってきます。
それは例えば、先方の回線の都合であったりシーケンスセクションへの考え方などで上記インプット内容と同じものをそのまま欲しいと言われる時もあれば、リズムとシンセの二系統にまとめて欲しいとリクエストされることもあり、その場合は音階ものは全てシンセチャンネルへまとめます。
特にこの「まとめた」シチュエーションにおいて、卓上にインプットで分けた意義が強く出てきます。
ライブの流れ上ハウスエンジニアさんがここでシーケンスを突きたいと思った時、まとまっている場合は本当に出したい音(例えばテーマのシンセ)以外も一緒にレベルが上がってしまうことになり、結果不必要な音も空間を占拠して全体のバランスが崩れてしまう可能性があるのです。
そういった場合、こちらで必要なチャンネルのみをフォローして上げればそういった問題も起こりにくくなります。
(それにはもちろん事前の打ち合わせや本番後の音源チェックなど、楽曲とシチュエーションに関するお互いの意見交換が必須です)

このようにフレキシブルにフェーダーやEQ・卓のエフェクターなどでバンドサウンドと「熱量」を共有し馴染ませ、全体としての「バンド・サウンド」にしていきます。
逆にまったく触らず、ハウスエンジニアさんに「同じもの」を渡すやり方も正しいと思いますし、シーケンス(マニピュレーターセクション)とはそういうものだと考えている方も多い気がします。
あくまで僕のやり方、ということで。

この他にPAチームからモニター用にハウスミックス(最終的にお客さんが聴くミックス)ともモニターミックス(自分用にバランスを作ってもらったミックス)をもらいますが、現場によってはどちらか片方しかない場合もあります。
「なんで二系統必要なの?」と言うと…(次回へ続く!)

2014年10月10日金曜日

ほんの少し

今回は、ややテクニック寄りのお話です。

TD(トラックダウン:録音された各楽器や歌などの音を調整、ミックスする作業)においてミックスエンジニアさんは様々な機材やテクニックを使うのですが、中でも歌のエモーショナルな部分には特に時間を掛けます。
ここぞという場所でフェーダーで突いたり(音量を上げる)引いたり(音量を下げる)ことによって他のトラックに埋もれたり浮いたりせず、かつ歌詞や歌の表情を豊かにすることで聴いている人により自然に伝わるようにするのです。
もちろん全ての箇所で行っているわけではありません。
必要な場所で、必要なだけ。
そもそも歌を録る段階でボーカリストがしっかりと表現しているわけですから、あくまでもほんの少し添えてあげる程度。
そしてその「ほんの少し」がピリリと効いて良い作品に繋がっていくわけですね。

録音時に入るレコーディングエンジニアさんの中には、歌録りのときにこの作業を同時にする方もいます。
今はデジタル制御が可能になったのでフェーダー情報を記録させることもできるのですが、昔ながらのやり方だとフェーダーを上げ下げした後の「結果の音」を直接録音します。
つまりやり直しが出来ないので、エンジニアさんのスキルがそのまま反映されるわけです。
これはその曲全体、メロディーと歌詞の関係、そして当然ボーカリストの歌の持ち味・癖までもをしっかりと把握していなければ出来ないシビアでデリケートなお仕事。
最近ではTD前提で録りの段階では触らないという風潮なのかこの光景はあまり見なくなった気がしますが、僕の周りだけかな…?



さて、実はここまでは長い前振り。

僕はライブマニピュレーターとしてサポートに入る時、これと同じようなことを自分が出す音に対してやっております。
例えば次の曲の最初が僕の音からスタートだったとして、前の曲が終わったときのお客さんの反応がもの凄い声援や拍手だった場合は通常の音量だと負けてしまって曲が始まったことが伝わらないので最初だけドンと音量を突いたりします。
ただしそのままだとお客さんが気づいて拍手が引いて静まったあとはうるさいだけになってしまうので、その状況の変化と共に元の音量に戻していきます。

同じように、イントロのシンセのこのフレーズがキモ!…だけども全部が全部大きいと「音の面積」が大きいだけになってしまうような場合はフレーズの頭だけ突いてお客さんの耳をそこに注目させ、そこからすっと引いてやることによって残りのフレーズに耳を追わせるといったこともやります。
周りがうるさい中でも誰かと話をするときはそこに意識を向けることによって会話が成り立つのと同じ現象を利用しているわけですね。

ここで気をつけなくてはいけないのは、最終的な各楽器・歌のバランスを作っているPAエンジニアの方も同様のことを行う場合があるということ。
基本的にはメイン(主にボーカルだったり、ギターソロだったり)を追いかけているので曲中のシーケンスの細かいところまでは触らない…というかそんな暇はないはずなので「やっていることが被る」ことはありませんが、曲の頭やテーマ的なパートとなると実際の正解=会場のお客さん側で音を聞いているエンジニアさんが同じように「ここは…」と思うのは理の当然。
なので、お互いが同じことをやってびっくりするくらい大きくなってしまった!ということがないように、事前にしっかりと打ち合わせをするようにしています。

そしてそれには先述のエンジニアさんに関してのお話で触れたのと同じ、曲に対する深い理解が必要となります。
データというデジタルなものを扱うセクションでありながら僕が仕込みに長い時間を掛けたり、急に入ったライブサポートに苦戦する理由もそこにあります。
データの仕込み自体の時間はしれたものですが、楽曲の意味や歌とバックトラック・生音のバンドとシーケンスの関係を身体に入れないと本来の曲の良さを引き出せないと考えているからです。
ただボタンを押して再生させるのなら誰でも出来ます。
僕はこの「音楽として成立させる」ところにマニピュレーターとして呼ばれていると思っているので、バンドメンバーが自分のパートを覚えるのと同じくらい丁寧に時間を掛けます。
これはプレイヤーの意識を持って挑まないとダメなんじゃないかなと思っている部分です。

さて、こういったプログラミングでは予想が難しい状況に柔軟に対応できるように僕は大きなミキサーを持ち込んでいるのですが、多分そのせいもあって「マニピュレーター=PAエンジニア」という誤解を生んでいるのかもしれませんね ^^;

では何故ミキサーが必要かというと…(次回に続く!)

2014年10月7日火曜日

「STRONGER」 / N.A.O.

先日bayfmで初披露されましたが、N.A.O.ちゃんのニューアルバムにアッパーチューン「STRONGER」のトラックメイカーとして参加しております。

タイトルを見てピンと来た方はかなりの宇佐美通です。
そうです、あれですね〜。
満を持してのCD収録です!
ぜひぜひ聴いて盛り上がっていただきたい!

ただいま絶賛プロジェクト進行中ですよ〜。

ここのところの諸々…「ハモれメロス」ツアースタート! / The Gospellers

9/27・神奈川県芸術劇場よりゴスペラーズ坂ツアー2014「ゴスペラーズの『ハモれメロス』」ツアーがスタートしました。

僕はゲネプロ、初日〜二日目と「見守って」きました。
なんと11年ぶりのシアトリカルライブ、今回はいろいろと趣向が凝られされておりますよ…ふふふ。
全28公演、沢山の歌と感動が各地に訪れることでしょう!

ここのところの諸々…幕張メッセ2Daysにてワールドツアー千秋楽! / BABYMETAL

9/13、14幕張メッセ イベントホールにて、7月のヨーロッパ編から始まったワールドツアーがついに千秋楽を迎えました。

途中のLADY GAGAさんのオープニングアクトの数本を除いてマニピュレーターでサポートしていたのですが、いやはや今回も良い景色をたくさん見せて頂きました。
単発のライブでももちろん全員全力疾走ですが、やはりツアーというチームで動きながらひとつのステージに臨み続けることは士気や連帯感、スキルの向上に繋がります。
特にここの現場ではキツネ様から遣わされた3人の「伸び率」が半端無いので、回を追うごとに逞しくなっていく過程を見てこちらも負けていられないと思わせてくれます。
バンドメンバーも若くて音楽的知識・スキルも素晴らしい方ばかりで一緒に動いていて刺激的!
それなりに長くやってきていると、ある種の定形・セオリーが出来てくるものですが(経験から導き出されたものなのでとても大切です)それを嵌めこむほうが良いのか、違うアプローチが良いのかを考えるきっかけも多くもらえ、思い出深い旅となりました。
アドバイス出来るのも年の功…おっさんの押し付けにならない程度に「こんな方法もあるよ」と出来たのではないかと思います。

それにしてもさすが幕張、大きな大きなライブハウスでは特効も凄くて音玉や火柱では本気でヤバいと思いました…!
今回僕はステージ真横でバンドさんよりも前に位置していたため炎が目の前で立ち上った時は思わず熱くて笑ってしまいました。
そしてメンバーがお客さんを煽りに寄ってきた時にはすかさず身を隠してビジョンに映り込まないようにするという、これもお仕事のひとつだったりします(笑)

「BABYMETALという現象」に関してはヨーロッパ編終了のときのエントリーに書いたので改めて何かを言うこともありませんが、「何がどうでなくてはいけない」ではなくて「毎回最大出力で放出しているものに対して道が出来ていく」という行程を楽しむのが良いのではないかと思います。
柔軟に、楽しむ。
是すわなち音楽を愛でるということ。
彼女たちを何かの型にはめ込むということは自らの音楽の柔軟性を欠くことに繋がるのではないでしょうか。

追加公演のニューヨークとロンドンがありますが、まずは一旦終了、関係者の皆さまお疲れさまでございました!

ここのところの諸々…J-WAVE LIVE 2000+14 / The Gospellers

8/31、国立代々木競技場 第一体育館でのJ-WAVE LIVEにてThe Gospellersのサポートをしてきました。

実は今回が初参加のゴスペラーズ、ちょっと意外でした。
最新シングル「SING!!!!!」の他、アルバムからの新曲「HIT ME」も大盛り上がりでかなり良い感じでしたよ!

CDなどでのレコーディングされ、整頓されたものをライブで再現する場合、必ずしも完全再現することが「イコール同じもの」になるとは限らず、敢えてパート数を抑えたり或いは違うアプローチをすることによって同じ印象を与える結果に繋がることがあります。
特に音の数が多い曲などではライブ空間という音が壁に反射して干渉したりしやすい状況では整理整頓、デフォルメが功を奏することも多いです。
特にゴスペラーズは5人がそれぞれリードを取ったりコーラスに回ったり、しかもそれが楽曲の音像の大切な部分を担うので創意工夫が必要になるわけですね。
(勿論すべてがそうではありません。必要なときに、必要な場所で)

アッパーな曲からバラードまで、代表曲を始めとしたカラフルなセットリストでしたので初めてのお客さんにも楽しんで頂けたのではないでしょうか。



この日は他のアーティストさんやミュージシャンにも見知った顔が沢山で、楽屋ゾーンではさながら同窓会のようになっておりました。
特に三浦大知くんとは先日のSOUL POWER SUMMITぶりの再会で、今まで数年に一度くらいの頻度が二ヶ月も経たずだったのでかなり新鮮でした。
呑みにいかなきゃ〜ね!

出演されていた皆さん、それぞれが素晴らしいステージで音楽ってやっぱり楽しいな〜なんて満足感いっぱいの一日でした!

ここのところの諸々…SUMMER SONIC 2014幕張〜大阪 / BABYMETAL

昨年に引き続き今年もBABYMETALサポートにてサマソニ!

8/16幕張メッセ、翌17日は大阪・舞洲と連チャンでやってきました。
ステージも昨年より大きなMOUNTAIN STAGEとなり、沢山のお客さんに観て頂けたのではないかと思います。

フェスは応援してくださっているファンの方以外の、興味を持って立ち寄ってくれた人、なんとなく居合わせた人などが新しい音楽に出会える場所。
毎回こちらもワンマンライブの時はとまた違った緊張感とワクワク感を持って挑んでいますが、「いつもと同じ、最高のパフォーマンス=全力疾走」が出来たのではないかと思います。
これを機会に興味を持って頂けたなら幸いです。

当たり前の話になりますがフェスは多くのバンドが集う場所、必然的にミュージシャンやスタッフもそれぞれのチームが集まりますのでステージ袖は各アーティストの楽器やPA機材がところ狭しと並んでいます。
僕の居場所も含め、各チームの連携が良いステージを作れるかのキモとなります。
今回だとモニター卓が奥の方に配置されていたのでどうしてもステージ上とのやりとりが難しく、スタッフが気づかない状況では僕がサインを受け取って中継したりしていました。
こういったこともフェスならではのことかもしれませんね。

いやいや、今年も暑い夏でした!