1月5日、ギタリスト藤岡幹大さんが永眠されました。
整頓せずに書きます。多分、長くなります。
最初にお会いしたのは4年半前だったか、とあるスタジオでのオーディションでした。
僕は不勉強で藤岡さんのことはよく存じ上げませんでしたが、周りから「すごい人が来るよ」と聞かされていました。
僕が用意したギターレスのトラックをバックに素晴らしいプレイとその音色で圧倒されたことを覚えています。
それからは数々のステージを共にし、フロントに立つアーティストを全身全霊でバックアップしてきました。
藤岡さんはお客さんから見てステージ左の下手(しもて)側、僕はステージ右の上手(かみて)側になることが多かったので、曲終わりでのチューニングやギターの受け渡しなど、遠くにいる藤岡さんの動きに常に注視していました。
僕の前、ステージ袖には大体の場合ステージ中のメンバーを照らすための照明機器が置かれているので、特に大きな会場の場合はリハーサル前に藤岡さんの場所に実際に立ってアイコンタクトが取れるかどうかを確認するのが僕の中の決まりごと。
その時に、今日の本番中にはこの場所からどんな景色が見えるのかなと想像するのも楽しみのひとつでした。
視線問題はどうしても条件が厳しい場合が多くなるのですが、藤岡さんはいつも「見えないけど大丈夫」と笑っていました。
事前に打ち合わせをしているのであとはお互いの信頼関係で、「まぁ何かあっても宇佐美さん合わせてくれますし」と。
思い返せばいつもギターに触れていて、休憩時間でも弾きながらぶらぶら歩いていて「あれ、流しの人がきた」と言えば「あ、どうも〜」といつもの笑顔で、でもよくわからない高速フレーズ(褒めてます)を奏でながら通り過ぎて行ったりすることもありました。
本当にギターが好きなんだなぁと。
生音がとにかく綺麗なので、アンプを通したあとの音色が歪み系であってもフレーズがしっかりと耳に届く。
一緒に過ごす時間が増えてくると、とあるエネルギー飲料をことあるごとに飲んでいることに気が付きました。
気が入る、というようなことを言っていた気がします。
いつからか自分の飲み物を買いに行く時に一緒に買ってきて渡すようになり、その都度「おーありがとうございます!今度は僕がおごります!」と言っていましたが結局一度も返ってくることはありませんでした(笑)。
話のテンポ感が独特で、ひょうひょうとしているようで言葉と言葉の合間にいろいろなことを考えて、表現を選んでいて。
深夜に突然お子さんの写真を(前後の文脈無く)LINEしてきて、でもこちらの返信には無反応で、あぁ酔っ払ってるのかなーなんてこともありました。
子煩悩パパで愛妻家。
僕の妻にも家族ぐるみで仲良くしてくださいました。
ご家族の皆さんにも本当に感謝しております。
ご自身が活動された仮BANDさんと僕らUxSxBのツーマンも本当に楽しかった。
たった3本でしたが非常に充実した時間でした。
「宇佐美さんラップするんですね」と、たいそう驚かれていました。
最初の頃に観に来ていただいたときはその曲がなかったのでそりゃそうでしょうね。
普段はオフステージの僕しか知らないわけですから、さぞかし面白く映ったのではないかと思います。
そもそもそのツーマンがきっかけで自己紹介曲を作ったわけで、掴み曲となったそれは藤岡さんが大きく関わっていると言っても過言ではありません。
ライブ現場だけの関係ではなく、僕の作品にもいくつかギターで参加していただきました。
やりとりは簡潔で無駄がなく、こちらのデモトラックに十分配慮した上でアイデアも乗せてくれる。でもキモになる部分は外さず、それを言わずとも(非常に細かい部分なのに)分かってくれる。
所謂バッキング、メインを張るパートではありませんでしたが、だからこそお願いしたとも言えます。
お芝居も名バイプレイヤーあってこそ。
メインにもサイドにも立ち回れ、どちらにもしっかりと”藤岡音色”を感じさせてくれる柔軟性は毎回「こんな曲だったら、どう弾いてくれるだろう?」とお願いする楽しみがありました。
藤岡さんの訃報は悲しくて、やりきれない。
これは確かなのに、未だに実感が伴わない。
お酒を呑むと髪の毛ぐしゃぐしゃってやって、急に「寝る」って寝床に行っちゃう人がさ。
お通夜も、告別式も、ご厚意で本当の最後までご一緒させていただき、お見送りしたのに心の動きと感情の動きがうまく結びつきません。
トラブルがあったときには冷静であるべき、という職業病かな。
でも、やっぱり気持ちはちぐはぐです。
送り出す直前、最後のご対面のとき。
藤岡さんに掛けた言葉が「今度また、ギターお願いします」でした。
言いながら自分でも何を言っているんだと思いました。
先のプロジェクトではあるけど、ぼんやりとこれは藤岡さんで録りたいなと思っていたのは事実だったから、眠る藤岡さんの顔を見たらつい、お願いしてしまった。
これを書いている今でさえ現実味がなくて嘘のようです。
でもやっぱり、きちんと身体に入れないと。
正直、悔しい。残念でなりません。
藤岡さん、あなたの成してきたことのうちのひとつが、ニュースになっています。
日本だけに留まらず、心を痛めている人たちが沢山います。
同時に、まったく事実無根のノイズが聞きたくもないのに入ってきて憤りが隠せません。
でもそれだけ沢山の人の目や耳に触れ、心を揺さぶったということなんですよね。
すごい人だよ、藤岡さん。
一年の内にほんの一時、次の約束はないから毎回最後のつもりで一緒にやっていたけど、こういうお別れは予想していなかったから、やっぱり寂しくて悔しいです。
先月のデカい箱でのライブ終演後に、小柄だけどがっしりとした手でお疲れさまの握手をしたのが最後でした。
心よりご冥福をお祈りします。
僕が撮った写真、気に入ってくれていたようでした。
変なのもいっぱいあるけど、どれも藤岡さんらしくて好きです。
そういえば二年前くらいから同じ現場なのに移動の飛行機や、会場のステージや楽屋で会う度に
「あれ、宇佐美さん。偶然ですね」
「あれ藤岡さん、今日は何用で?」
「今日ライブなんです」
「それは奇遇ですね、僕もです」
こんなやりとりをしつこくやっていました。
楽しい人です。